槍ヶ岳東鎌尾根

(北鎌尾根撤退から)

2006.10.8

槍ヶ岳北鎌尾根を当初は燕岳から入山、7日〜8日の予定でしたが天気予報で7日は断念。
2日間でとなると私の足では辛いものがある、ルート変更・・7日夜に上高地入りし、8日早朝
から行動を開始、大曲から水俣乗越、北鎌沢出合、天候を見て北鎌沢コルに向かう予定。
そして9日が晴れれば・・・という期待で自宅を出ました。

7日夕方福井を出発、天気図の話から数年前の立山での遭難の話しになる、あの時とは少し違うが急に
冬型になることも考えられるという、そうなれば途中撤退もあるでしょう。平湯を6時過ぎのバスに乗り込み
上高地へ・・冷たい雨が降っている。カッパを着て手袋とヘッドランプを付けて歩き出す・・う〜ん、ザックが
重いけどガマンガマン!真っ暗闇を無言でひたすら歩く・・・あっという間に徳沢に到着。時計を何度も確
認するがバスターミナルから1時間もかからず来てしまったようです。狐につままれちゃったかな(^_^;)
雨の中テントを張って、暖かいうどんを食べて、さっさと就寝。AM3時半起床、軽く食事をしてテント撤収。
雨は降り続いていますが、AM5時に徳沢を出発。やけに寒いと思ったら薄明かりに見える山が白い(>_<)

横尾は色とりどりのカッパで賑やか、テント場も間隔がないほどにすし詰め状態です・・すごい。3連休だ
からこの天候でも多くの人が入っているようです。私達も一旦ザックを下ろして休憩する、トイレも並んで
順番待ち。天気が思わしくなく気は重いのですが、明日の天気に期待。AM6時に横尾を出発。

AM7時、槍沢ロッジに到着。相変わらず雨は降り続き、見上げる山も白い。霧のように見えるけどまだ
雪が降っているようです。昨夜ロッジに泊まった人たちも諦めて下山されるみたい・・今日槍ヶ岳に向か
おうとしている人はロッジの軒先で寒そうに休憩している、この天候で躊躇している人もいるのでしょう。
15分ほど休憩させてもらい、ロッジを出発。そこから30分ほど登ったババ平のテント場にも数張りのテ
ントが設営されたまま。まだ皆さん、出発はしていない様子。山を見上げては「今日は少し難しいかな・・」
と不安がよぎります。

この辺りまで来ると木々が色づいて紅葉と雪のコントラストが美しい。時々空も明るくなるので、少しは期
待できるかな・・という思いもしてくる。大曲の分岐、AM8時10分。槍ヶ岳に向かう人が数名、ここで私達
は槍沢から水俣乗越に向かうことになります。ここからが急登の始まり、それと同時に雨が雪に変わって
ザックが白くなり、重さが増してきます。

積もった雪はだんだんと深くなり歩き辛い、途中休憩して暖かいお茶を飲み、体を温めて先に進みます。
AM8時15分、水俣乗越に到着。稜線に立つと強風です、少し下がって雪の上にしゃがみ休憩・・積雪
は深いところで20〜30センチ。ここで北鎌に向かおうとして撤退してきたというそれぞれ単独の2名に
出会う。しばらく話をして彼らが槍沢に下るのを見送り、私達は様子を見ながら水俣乗越直下を下り始め
ることにする。雪が積もった草付きの急斜面を慎重に降りる、下れば下るほど風は強くなり雪が頬を叩き
辛さが増してきます。明日の天気は回復する・・・との確信はあるものの、ここで撤退を決めました。稜線
に戻り、振り返るともう一組が撤退をして登ってくるのが見えました。

このまま槍沢に戻るか相談して、東鎌尾根に向かうことに決めます。AM9時45分、水俣乗越を出発。先
ほどより少し風が弱まりましたが相変わらず頬に当たる雪は痛い・・歩いていると寒さは感じなかったけど
目にも雪が入りゴーグルを持って来なかったことを後悔しました。岩場、木の梯子を何度か越えて雪が積
もった狭い稜線を無言のまま進みます。時々M氏が振り向いてくれるのが救いでした・・ハイマツの葉も
凍り、木々の葉も雪と氷でビスケットのようになっています。夏場であればそれほど怖くないであろう垂直
の鉄梯子の連続が少し緊張しました。手袋をしていても手が凍りそうになるのです(>_<) 

さすがにこの看板を見たときは嬉しかった〜(#^.^#) AM11時15分ごろヒュッテ大槍に到着。小屋の周り
もかなりの積雪でした。そ〜っと扉を開け「休ませていただけますか?」とお願いする。受付の若い男性が
「どうぞ・・で、どこから来られましたか?」と・・・土間でカッパを脱いで椅子に腰掛けるのですが体が冷え
切っていて震えそう。ふとガラス越しにストーブが目に入りました、昨夜ここで停滞した人6〜7名がそれを
囲んで話している。(暖かそう〜いいなぁ♪) 暖かいカフェオレを2つ注文して、無理をお願いしてストーブ
にあたらせて頂きました。昨夜、雨の中上高地を歩いたために私の靴の中はびしょ濡れでした。それが冷
たくて冷たくて・・予備の靴下は持っていますが、履き替えても無駄。濡れた靴下をストーブで乾かしながら
1時間ほど休憩させていただきました。本当に感謝・・・ヒュッテ大槍は素敵な小屋でした、人もストーブも温
かかった。機会があればこんな小屋でゆっくり泊まりたいなぁと思いました。

PM12時10分、ヒュッテ大槍を出発。扉を開け、外に出るのにかなり勇気が必要でした(>_<) 外は写真
のように吹雪です。見た目より積雪もあり、深いところは30センチくらい。降ったばかりの雪なのでそれ
ほど辛くはありませんが何せ風が強い!こんな吹雪でも数名の登山者が登ってきました。明日の晴れを
見込んでいるのでしょうが、皆、軽装でカッパも着ておらず、手袋もしていない人もいました。ポンチョの
人もいます。「少し下で登山道を見失いましてね、上は降っていますか?」と・・・当たり前です、見ての通
り吹雪ですよ (>_<) 信じられません、そんな軽装で行っちゃうのですか・・・

少し下ると空が明るくなって、朝登ってきた稜線への道が見えてきます。急登・・自分で自分を誉めてやり
たくなります。大曲のあたりでまた登ってくる登山者と出会い、念のために「上は吹雪ですよ、30センチく
らい積もっています」と話しますが、「へ〜」と言うだけで引き返すことはしない。仕方なく「気をつけて」と言
い別れました。このあと徳沢でもう一晩キャンプして、明日は霞沢岳に登ろうかと話したのですが靴の中
が濡れて気持ちが悪い私はその気にならず「帰りたい」といつになく弱気でした。最終のバスに間に合う
ように急いで下山し、平湯へ直行。ゆっくりと温泉に入り、疲れ切った体を暖めました。
北鎌尾根には行けませんでしたが、無事に下山できたことに感謝です m(__)m


このあとこの3連休に穂高や白馬などで遭難が相次いだことを知りました。ご冥福をお祈りします・・