錫杖岳前衛壁左方カンテ

2008.9.23

2005年9月10日  思い出の一枚。錫杖岳南峰の先っちょ!

2004年、笠ヶ岳に登る時、間近で錫杖岳を見て孫悟空でも飛んで来そうな岩山だなと思った (^_^;)
その数ヵ月後、山頂(南峰)に登ることができ、感動!ピッケルが刺さった岩に立つと足が震えたっけ。
よく見ると垂直の壁にクライマーが張り付いている。あんな所、猿も登らん・・けどカッコイイなと思う。
そして3年後の今日、その岩壁にこの私が挑戦する!
よっしゃ〜がんばるぞ〜 (*^^)v

中尾温泉入り口の無料駐車場で仮眠。前日は雨、そして当日の予報は晴れということで人気の岩場は
かなり混み合うことが予想される。まだ薄暗い中、ヘッドランプを点けて出発。
槍見温泉横から笠ヶ岳への登山口に入る。クリア谷の渡渉ポイントからしばらくで錫杖沢出合に到着。
今日はテントが一張りしかない。左岸のテープに従って樹林帯の中の踏み跡を辿る。

結構急登なので木の枝を掴みながら登るところもあり、ふと上を見上げると木々の間から岩壁が見える
「ひぇ〜やっぱ、あれに登るんですよね」 何だか緊張してきたぞ・・
沢から右に回り込むように踏み跡が続き、それに従って進むとすぐに左方カンテ取り付き。

ここでハーネスを付け準備はOK!ちょこっと小腹が空いたので急いでパンを一口(^^ゞ
超緊張する〜ホンマに登れるんかな・・・止めるんなら今やぞ・・・イヤ、イケるやろ・・・ホンマにやるん?
心ん中でいろんなことを考えてみる、でもここまで来たらやるしかない!気合じゃ〜!(^_^;)
しばらくすると、いつもネットで見ている山岳ガイドさん一行が到着。(山ヤって雰囲気でカッコイイやん)

1P目はチムニーから。出だしの岩溝の中は昨日の雨のせいか岩が濡れていてヌルヌル・・・
数メートル頑張って上部に抜ければホールドもしっかりあり、簡単。浮き石に注意。
さっきのガイドさんは左側のリッジから突入、その方が簡単そうに見える。
青空と焼岳が綺麗だ \(^o^)/

2P目、続いてルンゼ状を詰めると垂直の壁があり、見た目はちょっと大変そう・・・まぁ何とか頑張る!
後半ルンゼをジンワリ登ると上部ピクナルに出てビレー。
ホッと一息で空を見上げると素晴らしい青だ〜\(^o^)/

3P目は今日最初の核心らしい。私にしたらどれも最初から核心みたいなもんで、命がけだったが(^_^;)
出だしのピクナルを乗り越え、右側に回りこむと高度感バッチリのフェイス。写真を見ると超怖いな・・・

テラスからやや上部に上がってビレーポイント。穂高の展望が素晴らしく、思わずニヤけてしまう(*^^)v

某HPと雑誌によると、今年7月頃に左方カンテでは「ビレー点整備と残置の一部を整理した」という事で
もしかすると以前より大変かもしれんとM氏から聞いていた。
結局自分は初めてのルートだから何も感じなかった(^^ゞ

4P目は見上げるだけで恐ろしげなチムニー。ザックが大きいと引っかかって大変、案の定途中で(>_<)
下を見ると2名のパーティが追いついてきた。身動きできずにいると 「ゆっくりでいいよ〜ガンバ!」と
言ってくれた。その声で俄然気合が入り、何とか踏ん張れた〜ありがとう(*^_^*)

5P目、ルンゼの横壁のフェーズを上がる、上部で少し戸惑うが冷静に見るとしっかりとしたホールドが
見つかる。それを登ると立ち木のあるテラスに出た!ここならゆっくりできる!
朝からずっとビレーしてきて、ヌンチャクとカムの回収にも少し手間取った。ロープも重く感じてきた。
ここでかなりの待ち時間となるが、疲れた私にはありがたい(^_^;)

6P目、左方カンテ2番目の核心である。慎重にリードするM氏のルートを記憶しなくてはならない(>_<)
まず出だしはスリングに足を掛け、手を伸ばして体を持ち上げる・・が何度やっても届かず諦め〜〜
左の頼りなげな立ち木に足を掛けて登った。その上からチムニーに入るのだが、ここからが大変だ。
一段登った岩はグラグラ。落とさないように軽く踏ん張って、背中を反対側の壁に押し付けジンワリと
上がる、少しずつ少しずつ手と足、背中を使って(^_^;) 
指先と足先に神経を集中させて、何とかフェースに移動。僅かなホールドを探しながら上がる。
「そのまま真っ直ぐ上がってこい、上部が少し大変だぞ」との声。踏ん張るしかないがコワッ〜〜!
一箇所だけどうしてもヌンチャクが回収できない、後に来るK氏にお願いする・・・
諦め切れず、もう一度抜こうとしたが、やっぱりダメ。諦める、すいません。

6P目の最後、左に回りこみたいところだが手がない・・・「真っ直ぐだ」って・・・行くっきゃない(>_<)(>_<)
手がなくても足がある?!何とか踏ん張って終了できた、やったぜ!!
本日参加のK氏も大満足の笑顔です。ありがとう\(^o^)/ 感激で胸が一杯!

この時12時を少し過ぎていた。さすがに人気のルートということで、待ち時間がかなり長かった。
先ほどのガイドさんに伺うと、最終ピッチはそれほどでもなさそうなのでここで終了とする。

当初の予定では「注文の多い料理店」のルートを降るはずだったが、今日は一本のロープが短いため
そのまま来たルートを下ろうということになる。たぶん「注文・・」ではロープの長さが足りないだろうと。

先ほどのテラスに懸垂下降する。テラスには2名の男女が休憩中、ご夫婦ということでした。
日差しも暖かくのんびりムードだ。
「初心者なのでお待たせしてしまって・・」と言うと、「私も3年前まではそうだったよ、頑張りましょうね」と
言ってくれた、その人も優しさがとっても嬉しかった(*^_^*)

快適な懸垂下降とは言えども、連続すると結構疲れるものだ。特に斜めのチムニーはバランスが(^_^;)
ま・・でも登りよりずっとずっと気が楽だ〜
展望もバッチリ、西穂、ジャン、奥穂、山荘も見えるよ♪白出沢もハッキリと\(^o^)/

後にこの日、ytさんが白出沢〜奥穂に行かれ、翌日西穂まで縦走されていることを知る。
知っていれば手を振ったんだけどな (*^^)v

あと少し!でも事故は安心したところで起きるもの・・気を引き締めて頑張ろう!と思った矢先の事
残る3ピッチ目で本当にトラブル発生 (>_<) 
初めてトップで下ってみると言ったK氏が真っ直ぐに降りてしまう!「うそ・・・」
M氏が何度も「右だ!!」と叫んだ。その声が聞こえないのか、とにかく降りてしまったみたい。
しばらくして、ロープいっぱいの所でほんの少しの足場があり、何とかビレーできるとのこと。
しかし、ここからが大変だった。
とにかく私は右側からテラスに降りる。そこからビレーして下を覗くとK氏が凄い所にいるのが見えた。
その場所から下はハングした垂直の壁、どうしたものか(>_<) 
K氏の現在位置が確認できたのでM氏に伝える。
K氏にロープを下げるために支点を探すM氏。そこも足場もないような安定しないフェイス状の壁で
ロープを引き上げるのさえ大変だ。何度かトライしてみるがなかなかうまくいかないみたい。
そんな時でも何の力にもなれず、見ているだけの自分が情けなく思うが今は仕方がない。
自分に出来ることは、平常心でK氏に声を掛けるだけだ。
テラスまで降りてジッと待つしかなく、時間だけが過ぎていく。その間いろいろなことが頭を過ぎる。
そのくらいの時間が経っただろうか、ようやくK氏のところにロープが下ろされた。
そして何とか足場の安定したところへ降りることができたようだ。ホッと胸を撫で下ろす・・
本当にM氏には感謝だ、彼の冷静な判断で事なきを得た。
K氏はとても恐縮していたが、私もいつこんな危険な場面に直面するか知れない。
その為にはもっともっと練習を重ねなければと思う。
無事で良かった(*^_^*)

分岐まで来て、涙が(^^ゞ 左方カンテに行ったんだ・・

走るように下り、何とかヘッドランプを出さずに登山口に到着できた。
登山道沿いの草むらに大切な熊鈴を落としてしまって非常に残念でしたが
それも何か意味のあることかもしれないと思い直した。
橋の下の露天風呂には数人が入っている、気持ち良さそう♪
私達も急いで温泉だ〜!




今回も多くのことを学んだ。こんなに素晴らしい経験ができたことが嬉しい。
そしてここは憧れだけでは行けないクライマーの聖地なんだと思った。
学んだことを生かせるように、そしてもっと努力が必要なんだと実感。
ご一緒してくださったお二人に感謝、ありがとうございました m(__)m