北岳

2007.6.30〜7.1

3193m

1日目

仕事を終え一目散に家に帰ります。今回はテント一泊、よって3日分の夕食作り・・毎年暑い季節になると
メニューに悩みます、キッチンに並んだ鍋を次々冷まして冷蔵・冷凍庫へ。今夜の食事はテーブルにセッ
ティングして準備はOK!毎週手抜きですが、好き嫌いもなく食べてくれる家族に感謝しなきゃ(^−^) 
PM9:10 予定より少し遅れて自宅を出発です。途中、和たん・ジオンさんと合流し夜叉神峠へ。3時間
程仮眠します。目が覚めると周りの車も出発準備を始めていました、私達も急いで準備をします(^_^;)
落石があったということで始発のバスが出たのはAM6:40 広河原 AM7:25着

今日は開山式とあって、沢山の登山者で賑わっています。大樺沢出合のゲート前で、どのコースで行くか
アイゼン・ピッケルなどの冬山装備はしているかと聞かれました。先週北岳に登られたという方に雪の状
態など、事前に写真や詳しい話を伺っていたので良かったです(#^.^#) 野呂戸の吊橋を渡り、安全指導
センターで登山届けを提出して、さぁ、いよいよ北岳目指して出発です♪AM7:55

池山吊尾根から挑戦した厳冬期の北岳、凍傷の傷跡を見るたびに思い出すのは、つらいラッセルとキラキラ
輝く雪の頂。あれから7ヶ月、冬しか知らない山の復習をするために、もう一度てっぺんを目指します。そして
この山にしか咲かないというキタダケソウに会いに行きます。どんな景色に出会えるかな (#^.^#)

しばらくは新緑の美しい樹林帯を気持ち良く歩きます。20分程の所に大きな岩があり、それを右に行くと
白根御池小屋へ、左に行くと大樺沢大雪渓へ。私達は小さな流れを渡り左に進みます。だんだんと川の
音が大きくなり、水量も多く荒々しい流れの大樺沢に平行する登山道を歩きます。先週はまだ架かってい
なかったという橋も開山式に合わせて架けられたみたいです、ホッとしました、良かった〜

やっと雪渓にでました、しばらくはアイゼンを付けずに歩いてみました。でも実際は写真で見るより傾斜が
あって歩きづらいのです、それで途中でアイゼンを付けました。その方が断然楽 (>_<) 前方には、延々
と続く雪渓が見えます、まだまだ先は長い。出発時にはあんなに晴れていたのに青い空も山も霧に包ま
れ、雨もポツポツしてきました(^_^;) これからが急登になるというのに・・・不安になります。
二股に到着AM9:45 ここで半数以上の人が右俣コースに向かうようです。私達は予定通りに左俣へ。
少し歩いてから、カッパを着ることにします。

雪渓を背に振り返れば地蔵岳、観音岳が。
見上げると憧れの北岳バットレス。

事前に調べていた時に見ていた大樺沢の大雪崩跡。この辺りでジオンさんは高山に弱いということで見て
いるだけでも辛そう。何度も立ち止まり、呼吸を整え、それでも少しずつ前進。大丈夫だろうか、不安がよ
ぎります。和たんも辛そう、でも私には何もできません、振り返り見ているしかないのです。頑張って!!
大雪崩跡の岩の上に腰をかけて休んでいる人が大勢いました、辛いのはわかりますがこれだけの岩が流
れて集まっている場所ということは?危険です、こういう所は、さっさと通過しましょう。この時、実際に音も
なくコロコロとバレーボールくらいの岩が落ちてきました。「ラーク」と言う声に一瞬ヒヤリ (>_<)
上部でもう一度二股に分かれます、右手にバットレスの黒光りした岩を見ながら、かなり急登の斜面をも
う一分張りです。テント泊装備の荷が方に喰い込みます、ここが一番辛かった!!

PM12:50 八本歯への取り付き、雪渓から脱出してアイゼンとピッケルを外します、そこから木の階段
を登りました。一登りした所でザックを下ろし、待つことにします。私もこの時点でバテバテ。空腹を満た
すためにゼリーを食べました。二人が心配になり、もう一度階段を下りて雪渓に身を乗り出して探します。
しばらくして姿が見えてきました\(^o^)/ もう少しだよ〜〜高山病って辛いです、私も以前は頭がガン
ガンして辛かった。慣れる人と慣れない人とがいるみたいですが、私は今は大丈夫みたい。

そこからまだまだ苦しいいくつもの木の階段、登り切ると見覚えのある景色。八本歯のコルに出ました♪
PM2:15 冬期は池山吊り尾根から来てここをスタカットで登りました、雪の付いた八本歯ノ頭からの尖
った尾根。あの時はドキドキでしたが目の前の白いバットレスが美しかった。今日は霧でほとんど見えま
せん (^_^;)冬の美しさとは違うけれど、幻想的な景色に感動しました。

コルから先の階段は冬には雪の下でした、これを越えれば北岳が見えるはず (>_<) 分岐手前で和たん
ジオンさんを待つことにします。PM2:45 ここは少し風があって寒かった、岩陰に隠れて景色をボーっと
眺めていました。ザックを置いて戻ってみると二人がいました、ジオンさんが辛そうにしています。もうひと
頑張りすれば吊尾根分岐、その手前の斜面にはキタダケソウが待っています。和たんと休み休み行くか
ら先に小屋に向かってくださいと・・テントを張らなければいけないので気を使ってくれたようです。
荷物の重さがあると休憩するのも結構大変なので、お言葉に甘えて先に行くことにしました。一緒に来た
のにほとんど別行動になり申し訳ないですが、ザックを置いた場所まで戻ります m(__)m PM3:30 

最初に見つけた花、ハクサンイチゲです。

池山吊尾根、山頂への分岐、北岳山荘小屋

斜面にはキタダケソウの群生地がありました。たくさんの人がザックを置いて一旦下り、今、ここでしか見
ることの出来ない花の撮影に夢中でした。私もゆっくりと写真を撮りました。もしかしたら和たんとジオン
さんが追いついてくるかもしれないと振り返りますがまだ見えてきません。時計を見るとPM4:00
とにかく先に山荘に行って待つことにしよう・・・このあと何が起こるか想像することもなく、こんな悠長な
事を考えていたのです。

吊尾根と山頂の分岐には上がらず、八本歯のコルから山荘への近道となるトラバースの道へ進みました。
先週行った人の話では残雪が多く、危険と思われるところが2箇所ほどあったということでした。事前にそ
れを聞いていたので、自分なりに考えながら進みました。岩壁に沿って木製の階段やハシゴがあります。
それも冬の間に壊れたところが多く見られ、こういう所に慣れた人でないとかなり危険。それにここまでに
体力を消耗しているし、重い荷物を持っているとバランスも崩れやすいと思われます。
途中で花の写真を撮っている若い男性一名に会いました。崩れた階段をいくつか通過すると雪渓が現れ
ます。先に2名が通過しているのが見え、私に「大丈夫ですか!」と声を掛けてくれました。少し考えた後
アイゼンとピッケルをつける事にしました。最後の4〜5mが凍っていて緊張しましたが無事に通過。
登山道に出てホッとしたところで振り返ると、3名の男性が後方に。アイゼンは付けていましたがピッケル
は持っていません。「これはマズイ」と思い、途中まで戻って雪を蹴り込みステップを切り直しました。先頭
の若い男性に私のピッケルを手渡して「慎重に進んでください」と。そして彼らがもう少しで渡りきろうとし
た時、雪渓に単独男性が入ってきました、手にはダブルストック、足元はおそらく軽アイゼンのようでした。
そして1歩、2歩進んだのを確認、アッと思った瞬間、滑落。その人の姿は見えなくなってしまいました。
「大丈夫ですか!!」 何度か呼んだ後に微かに声が聞こえたような気がしました。3名の男性には「ここ
にいて頂けますか?もし雪渓を入ってくる人がいても絶対に誰も通さないで、稜線に戻るように言ってくだ
さい」とお願いして、私は一人山荘に向かいました。ただ黙々と・・・滑落してしまった彼がどうか無事で・・
と祈るだけでした。

事故現場からもう一箇所雪渓があり慎重に通過します。山荘へは30〜40分程だったでしょうか、入り口
まで登山者で溢れていました。すぐに受付にいる男性に事故の報告を。電話でヘリを要請していますが
霧で飛べないと・・しばらくして小屋の人がロープ、ヘルメットを持って救助に向かうのを見送りました。
私もすぐにサブザックに水と行動食、ツエルトを入れ、アイゼンを持って、稜線に向かいます。どのくらい
歩いたか忘れましたが、安全な道から来たジオンさんと合流できました.。和たんは遅れて来るということ。
霧が一段と深くなってきたので心配でしたが、とにかくホッとしました。
その後、テント設営、小屋の人たちが毛布やツエルトなどを運んでいるのを見ました。
話を伺うと、100Mの滑落、両足骨折、全身打撲、かなり出血はあったようだが幸い命は助かったと・・・
登山道に引き上げ明日までヘリを待つということでした。
しばらくして先ほどの男性が私のピッケルを返しに来てくれました、彼も毛布を運んだりして作業を手伝っ
たようでした、頭が下がります m(__)m

夜中何度か目覚め、外に出ると、トラバース道に灯りが付いているのを見ました。
小屋の人たちを含め、多くの人が私達登山者を見守ってくださっています。私にはとても出来ないこと・・・
本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです m(__)m

今回のことで私自身もいろいろ考えることがありました、沢山の反省もあります。山に対する自分の気持
ちだけではなく、もっともっと考えるべきことがあるんだ・・難しいけど。

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